去る11月19日(日曜日)に、年に一度の貸金業務取扱主任者資格試験がありました。
昨年も申し上げましたが、2時間内で50問4択の試験です。
今回もその中に唯一、手形法及び電子記録債権に関する出題がありました。
今年もその「問題」をご紹介いたします。
なお、一問あたりに要してもいい時間は、単純に計算して120分(7.200秒)÷50問=144秒(2分24秒)です。
宜しければ、挑戦してみて下さい。
<問題>
手形法及び電子記録債権法に関する次の①~④の記述のうち、その内容が適切でないものを1つだけ選びなさい。
①満期日のみ未記載のまま振り出された約束手形の受取人が、当該手形に、 あらかじめ振出人と受取人との間でなされていた合意と異なる満期日の補充をして、 第三者である譲受人に裏書譲渡した。 当該譲受人は、当該満期日に支払のため当該手形を呈示した。 この場合、当該譲受人が合意と異なる満期日の補充がなされていることを知って
当該手形を取得していたときであっても、当該手形の振出人は、当該手形が合意に反して 補充されたことを当該譲受人に対抗することができない。
② 約束手形の記載事項には、証券の文言中にその証券の作成に用いる語をもって記載する約束手形であることを 示す文字、一定の金額を支払うべき旨の単純な約束、満期の表示、支払をなすべき地の表示、支払を受け 又はこれを受ける者を指図する者の名称、手形を振り出す日及び地の表示、並びに手形を振り出す者の署名がある。
③電子記録債権の譲渡は、譲渡記録をしなければ、その効力を生じない。
④電子記録名義人に対してした電子記録債権についての支払は、当該電子記録名義人がその支払を受ける権利を有しない場合であっても、 その効力を有する。ただし、その支払をした者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りではない。
今回は今年1月に入社しました本多が、社長の指名を受けましたので説明させていただきます。
選択肢①は民法第九十四条の『善意の第三者』に関する問題です。
ここでは、『当該譲受人が合意と異なる満期日の補充がなされていることを知って当該手形を取得したときであっても、当該手形の振出人は対抗することができない』、が間違いです。
対抗することが出来ない場合は、当該譲受人が合意と異なる満期日の補充がなされていることを知らない、
つまり善意の第三者であった場合です。この問題での譲受人は合意とは異なる満期日が補充されていることを知っている
(過失がある)わけですから善意の第三者にはなりえませんので、当該手形の振出人は対抗することができます。
よって①の内容が適切ではないものになりますので、この設問の正解です。
選択肢②は手形要件についての問題です。
まず手形要件についておさらいしてみましょう。
手形要件は7つあります。
①証券の本文中にその証券の作成に使用する言語で約束手形であることを表示する文字
②一定の金額を支払う旨の無条件の約束
③満期の表示
④支払地
⑤支払いを受ける者又は支払いを受ける者を指図する者の名称
⑥振出日及び振出し地
⑦振出人の記名捺印又は署名
以上が手形要件です。
手形には所持人に補充権があり、何が記載事項だったか実務をしている者ほどあやふやになりがちですが、
②の内容は適切なのです。
選択肢③と④は電子記録債権法についての問題です。
まず③の選択肢は、第十七条に関する問題です。
第十七条(電子記録債権の譲渡)
電子記録債権の譲渡は、譲渡記録をしなければその効力を生じないものとすること、
となっています。
ゆえに、選択肢③の内容は条文の通り書かれていますので、適切です。
次に④の選択肢は、第二十一条に関する問題です。
第二十一条(支払免責)
電子記録名義人に対してした電子記録債権についての支払は、当該電子記録名義人がその支払を受ける権利を有しなくても
その効力を有する。ただし、その支払をした者に悪意又は重大な過失があるときはこの限りではない、
となっています。
ゆえに、選択肢④の内容は条文の通り書かれていますので、適切です。
如何でしたでしょうか。
今回の問題の①~④のうちの2つは電子記録債権法の条文がそのまま書かれていましたし、
1つは手形要件がそのまま書かれていますので、知っていれば正解出来た問題だと感じました。
上記の条文と要件を知らなかったとしても、『善意の第三者』について知っていれば正解を導き出せたと思います。
※詳しくは、2015年5月25日付のブログに書いていますので、宜しければご覧ください。下記にURLを載せておきます。
URL://手形.com/weblog/?p=593
拙い解説でしたが、最後までお読みいただき有難うございました。