今回も引き続き、平成30年1月1日付、東経情報掲載の
(株)クレイリッシュ 高木社長の”債権の売買を偽装するヤミ金融”についての記事を
紹介させていただきます。 今回の内容は似非ファクタリング業者が実際に売掛債権を回収した実例についてです。
これで特集記事の紹介は最後になります。
※同氏 掲載了承済み
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群馬県内で製造業を営むA社は、都内の似非ファクタリングBから210万円を借り入れました。
その際の担保は、1か月後に集金する予定の3件の売掛金計300万円。
契約書の内容じゃ300万円の売掛金を210万円で売却するというファクタリング契約で、
更に債権回収業務委託契約という書面にサインをさせられ、
『1か月後に300万支払わなければ、売掛金を押さえるぞ』と釘を刺されました。
A社はBの手数料があまりにも高利だったので借り入れを戸惑いましたが、
仕入先に支払う材料代や従業員の給料が不足し、銀行や貸金業者には借り入れを断られていたため、
1回だけならやむなしと借り入れました。
その一月後A社は300万円を手渡しで返済しましたが、また運転資金が不足し、
Bから再度借り入れしてしました。
そんな取引を何回か繰り返すうちに、借入金額は徐々に増し、A社は売掛先4件に対する550万円の
売掛金を売却するという名目で380万円を借り入れました。
Bに対する550万円の返済日、A社は予定通り550万円を回収したものの、他の支払いや弁済などで
その多くを支出してしまい、Bに対する弁済原資は200万円に減っていました。
A社はBの担当者に200万円を手渡し、不足する残金の弁済猶予を願いましたが、
Bはそれを受領しながらもA社の売掛先4社に対し、売買対象の売掛金をBに譲渡するという内容の
債権譲渡通知を発送しました。
しかし、その債権はすでに支払い済みであり、Bが回収できる残余がなかったため、
前記の各売掛先に対し、 その後の新たに発生したA社の売掛債権550万円を仮差し押さえしました。
A社は既に200万円は支払済みで、残金は350万円でないかと抗議しましたが、
「裁判で主張してください」と一蹴。やむなくA社は弁護士に相談しました。
ですが、Bの悪事を証明する証拠(契約書の写し、領収書)が一切なく裁判は難航。
更にはA社が借り入れた金額を上回る領収書をBに手渡していた事実が発覚。
(例えば、300万円を借り入れした際に400万円の領収書にサインさせられたなど)
このためBの高金利を証明するものが一切なく、Bの行為を正当化する証拠しかありませんでした。
その裁判が長引いた場合、差押さえ通知が送達された売掛先とA社との信頼関係が崩れ、
新規受注が見込めないうえ、棚上げされた売掛金による資金圧迫は想像以上のインパクトで、
事業の継続が困難となることが予想されました。
A社はやむなくBの要求通り550万円を支払うことで和解し、更に弁護士費用として
50万円の支出を強いられるという最悪の結果に終わりました。
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この上記事例では、売買の対象となった売掛金は既に債務者が回収済みですから、
本来似非ファクタリングが回収出来る売掛金は存在しません。
しかし、債務者と売掛先で定期的な企業間取引を行っている場合、今後支払われる
別の売掛金が発生しています。よって差押さえや債権譲渡の通知を受領した売掛先は、
債権者不確知(誰に支払えば良いか分からない)を理由として、法務局に弁済供託を行うのが一般的です。
売掛金を供託されてしまった債務者は、その後当該売掛先との商取引を停止されると同時に、
資金繰りがひっ迫するため、その通知を撤回すべく似非ファクタリングとの厳しい交渉が始まります。
短期間に和解できれば問題ありませんが、それが裁判へ移行すると似非ファクタリングは、
債務者が債権回収業務委託契約に違反したことを根拠に損害賠償を請求し、
また債務者は似非ファクタリング業者の行為が貸金業法違反にあたるとして過払金を請求。
また、その行為が公序良俗に反する高金利であると主張し、争う事例が増えてきました。
平成29年3月3日大阪地裁は、運送業を目的とする原告E社とファクタリングを目的とする被告J社との
争いで、債権の売買代金としてJ社がE社に交付した金銭が実質的な貸付金であると判断し、
E社がJ社に支払ったファクタリングの手数料を、利息制限法の上限金利(15%)で
引き直し計算した金額の差額として、『被告J社は原告E社に対し467万円余りの金員(過払金)を支払え』
と命じました。
当然ですがファクタリングに関する裁判所の判示は、ファクアリング業者と資金需要者の取引が、
「債権の売買」であるか「金銭の貸付け」なのかによってその判断が分かれます。
売買と判断されればファクタリング業者、貸付けと判断されれば債務者の勝訴です。
ちなみに、貸付けか売買であるかの判断の分かれ目は、
売掛先が支払いを不履行した際、債務者が償還請求(弁済の義務を負う)リコース契約であるか、
償還請求を免れる(弁済の義務を負わない)ノンリコース契約であるか、
が重要です。
このため、ほとんどのファクタリング契約(債権の売買契約)はノンリコースの約款を採用しております、
しかし、似非ファクタリングは売買の対象とした債権が未回収かどうかにかかわらず、
又は債権が実在するかどうかにもかかわらず、約定の支払期限に債務の弁済を強要し、
それが不可能ならば、売掛先に対する債権譲渡通知を発送、もしくは仮差し押さえを行います。
つまり、約款上はノンリコース契約となっておりますが、それを資金需要者に説明せず、
償還請求を行使しているのが似非ファクタリングの手口なのです。
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いかがでしたでしょうか?
第4回と長い間、最後までお付き合いくださりありがとうございました。