昔から、新入社員の研修で、色々な事を教える中、結構な割合で(…ほとんど全員が)知らない公証役場。
公正証書と言う単語はなんとなく知っていても、
その効果や基の公証人や公証役場については、詳しく知らない人が多いように感じています。
我々の業界では、強制執行認諾文言付の公正証明は基本的にダメ!(詳しくは又の機会に)
なんて法律が出来て、業界的には不人気?になる傾向にある公正証書なのですが、
逆に、一般市民はこの制度の活用が未だ不充分という認識から
日本公証人連合会は、公証役場のメリットを周知させる広報活動と併せて
「公証役場 公正証書 活用のすすめ」と言うご丁寧な本を税務経理協会が
出版されていました。(初版平成9年~平成18年五訂版)
実務上圧倒的に多く使われている、嘱託人の依頼によって手数料を徴して
売買や賃貸借の契約について作成されるのは、所謂〝私権の変動の公正証書″や
証明力を補強しようとする〝私署証書の認証″、〝定款の認証″、
〝私署証書が当日存在していたことを証明する確定日付の押印″等が
公証事務の中心で、それはご存知な方も多いかと思います。
今回はその本の中で、〝事実実験公正証書″と呼ばれている公証人の
認識した客観的事実につき作成される聞き慣れない証書の説明があり、
それについてお話ししたいと思います。
まず公正証書のメリットの1つとして「証明力」が有るのですが、
この事実実験公正証書は法律行為について、ではなく私権に関する事実について
作成され、一定の事実を証明し後日における私権上の紛争防止のために作成されるものです。
例えば、
①人の出生、生存、死亡
②身体財産に加えた損害の形状程度
③動産、不動産の種類、品質、大小、形状、数量、現存状態
④会社組合の総会の議事
⑤支払停止の状況
⑥動産、不動産の占有状況
⑦財産目録の調整
などがこれにあたります。
この事実実験公正証書のポイントは、「公証人自身が目撃した事実」
ですが、〝目撃″とか〝実験″なんておもしろい言い方だと思いませんか?
この本の中では、事実実験公正証書の例として
・弁済提供目撃公正証書
・貸金庫の開披点検に関する事実実験公正証書
・株主総会議事に関する公正証書
・破産財団に属する財産封印執行公正証書
・相続財産目録調整公正証書
・特許紛争防止の事実実験公正証書
が紹介されていて、最近では特許紛争防止の為の活用が多いような
コメントが書かれていました。
上の例の全てに公証人が「〇年〇月〇日〇時 〇〇で〝立ち合い目撃″、〝出頭″、〝臨み″、
〝現認″、〝見聞″、〝録取″、〝臨場″」と記述が有り、公証人も
出張仕事があって、手数料は1時間11000円(証書作成費用は別)なんだ、と
改めて感心していました。
そう言えば、平成27年4月27日付の小生のブログで手形法上は有効でも、
現在の全国銀行協会で流通している手形(小切手)以外は、金融機関は取り扱いしてくれず
事実上無効になってしまう件について書きました、「呈示」の問題ですが、
確かに事実実験公正証書で「呈示」の立証が出来るのでは?と今回思った次第です。
今回も最後までお読み頂き有難うございました。