営業部の青木です。
去る11月17日に、年に一度の貸金業務取扱主任者資格試験がありました。
2時間内で50問4択の試験なのですが、その中に今回も唯一、手形及び電子記録債権法に関する出題がありました。
今回は、その「問題」をご紹介しそれぞれ解説させてもらいたいと思います。
問題
約束手形及び電子記録に関する次の①~④の記述のうち、その内容が適切なものを
1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、本問におけるA,B及び
Cはいずれも法人であるものとする。
①Aは、Bにたいして、一定の金額を支払うべき旨の単純な約束(以下、本問において「支払約束文句」という。)に加え「商品の受領と引換えに手形金を支払う」旨の記載
を付した約束手形を振り出した。この場合、支払約束文句に付加された記載は無効と
なるが、当該約束手形自体は無効とならない。
②Aは、AのBに対する電子記録債権をCに譲渡する旨をCとの間で合意した。この場合、当該電子記録債権の譲渡は、AとCの合意のみではその効力を生じず、
譲渡記録をしなければ、その効力を生じない。
③Aは、AのBに対する電子記録債権(その発生記録において、電子記録債権法第20条(抗弁の切断)第一項の規定を適用しない旨の定めが記録されていないものとする。)をCに譲渡した。Bは、当該電子記録債権の原因となった契約をAの債務不履行を理由
として解除した後、当該電子記録債権の支払期日において、Cから当該電子記録債権の
支払を請求された場合、当該電子記録債権の原因となった契約が解除されたことを主張
して、Cの請求を拒むことができる。
④Aは、Bの詐欺により、Bに対して約束手形を振り出した。Cは、当該事情を知らず、かつ知らないことに過失なく、Bから当該約束手形の裏書譲渡を受けた。AはCから手形金の支払を請求された場合、Bの詐欺を理由とする手形行為取消しの抗弁をもって、
Cに対抗することができる。
解説
①は有害的記載事項に関する設問です。
手形の記載事項では、手形要件のように記載しないと無効になるものではないが記載されれば効力が認められる「有益的記載事項」、その事項が記載されても無視される「無益的記載事項」、そして手形そのものの効力が失われる「有害的記載事項」があります。
設問における「商品の受領と引換えに手形金を支払う」は支払いを条件づけるものであり有害的記載事項にあたりその手形は無効となりますので設問は間違いです。
②は電子記録債権法の第二十六条についての設問です。第二十六条には下記のように書かれています。
第二十六条(電子記録債権の内容の変更)
電子記録債権又はこれを目的とする質権の内容の意思表示による変更は、この法律に別段の定めがある場合を除き、「記録変更をしなければ、その効力を生じない。」
設問の通りです。
③は電子記録債権法の第二十条についての設問です。第二十条には下記のように書かれています。
第二十条(抗弁の切断)
発生記録における債務者又は電子記録保証人(以下「電子記録債務者」という。)は、
電子記録債権の債権者に当該電子記録債権を譲渡した者に対する「人的関係に基づく
抗弁をもって当該債権者に対抗することができない。」ただし、当該債権者が、当該電子記録債務者を害することを知って当該電子記録を取得したときは、この限りでない。
以上のように記載されており今回の債務者であるBは第三者であるCの請求を拒むことはできませんので設問は間違いです。
④は手形の善意取得に関する設問です。手形法第十七条には下記のように書かれています。
手形法第十七条(人的抗弁の切断)
為替手形に依り請求を受けたる者は振出人其の他所持人に対する人的関係に基く抗弁を以て所持人に対抗することを得ず但し所持人が其の債務者を害することを知りて手形を取得したるときは此の限に在らず。
以上のように記載されており設問のCは「当該事情を知らず、かつ知らないことに過失なく」とあり善意の第三者ですので振出人であるAはCに対抗することはできません。設問は間違いです。
以上の理由で正解は②となります。
拙い解説でしたが、最後迄お読みいただきありがとうございました。