法人の手形の振出人の欄・裏書人の欄には、住所・会社名・代表者名
(場合によっては「支店長」「経理部長」etc)が記載されています。
それは会社として手形を振り出すので「当たり前」の事として疑問すら持っていなかったところ、
先だって『会社の代表者名が抜けていても法人としての人格があれば、法人でない普通の人
(自然人)と同様に扱えるのではないですか?』と言った質問を受けました。
今回はその辺に付いてお話したいと思います。
まず前述の会社名のみの記載を「機関方式」と言うそうですが、結論から申し上げると
通説では無効になります。
それは、手形法第75条『手形要件』の記載の中には、7つ有りますが、その7号に
「手形を振り出す者(振出人)の署名」と書かれています。
どうやらこの機関方式だと「署名」にはならないから、と言う事が理由になるようです。
必ず、会社の誰が手形行為をしたのかの記載をもって「署名」とるべきのようです。
話しのついでに、「記名」とは、ワープロやスタンプで記された手書きでないものですが、
それには行為者に個性がないので、必ず捺印が必要になります。
ですから、手形法上では機関方式の手形や、記名で捺印の無い手形は無効ですが、
署名していれば捺印が無くても有効だと言う事です。
但し、前の「私製手形」の所のブログでもお話したように、手形法上はOKでも、
流通しない手形が有るように、現在の統一手形用紙では金融機関への届出印が
押印されていなければ、流通しない訳ですから、無理があります。
しかし、裏書人に至っては、記名ではなく署名していれば捺印は不要!と言う理屈になりますよね。
この捺印していない署名のみの裏書の手形に付いて、皆様はどのように考えられますか?
又の機会に「代理」に付いては述べたいと思いますが、手形行為は本人以外の代理行為も
流通性を担保する為に、かなり寛容に保護されています。
ですが、裏書と言えども捺印が有る方が、代行権限に基づかない(偽造)手形ではなかろうかと言う
懸念を少しでも軽減出来る理由になるのではないかと、現在は慣習化しているのだと思います。
「手形は受け取る際に注意義務を怠ったとして、後で問題が生じた時に、重過失を問われるといけない
ので 捺印が無いより、有った方が良い」と言う感じでしょうか…。
又、宜しければ皆様の御意見も伺いたいと思っています。
今回も拙い説明でしたが、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
※以下に、裏書についての判例を、参考迄に紹介しておきます。