商業手形の割引(資金化)だけで無くお困り事等ご相談ください。

龍実ブログ

皆さん、「偽造○○」と聞けば、偽造紙幣のように精巧に模造した物で、
手形であれば、カラーコピーをしたような物をイメージされたりしないでしょうか?

 

確かに、それも「偽造」なのですが、ここで言う手形の偽造とは、
”署名の代行権限がない者が、他人の署名を偽って、あたかもその他人が、
手形を振出したような外観を作り出すこと”を言います。
そのような手形ですので、偽造された人(被偽造者)は、自ら手形に署名したわけではなく、
又、他人に署名の代行権限を与えたものでもなければ、原則として、自らの意思に無関係な手形には
責任を負う必要はない、と言うのが当然のルールになっています。
しかし以下のような場合でしたら如何でしょうか?

 

A株式会社の経理を何年も任せられていたB子さん。
毎月、会社の支払い時に、社長の指示で『A株式会社 代表取締役社長 α』の
手形を作成していました。
ある日、B子さんは同様の手形を作成し、自分の目的の為にどこかへ支払ってしまいました。

 

この様な場合、A株式会社は「偽造された!」という理由で、責任は負わなくても良いのでしょうか?

 

この様なシンプルな事件?であっても、手形は、手形の流通性を保護するために、
手形法以外の民法をはじめ、会社法・商法を合わせた考えから対処されています。
最近の判例からは、使用者責任(民715条)に重点を置いた考えと、被偽造者の追認、
表見責任などの展開がされているようです。
又、皆様もご存知の通り、手形は無権限者の行為であっても、民法の表見代理規定の適用、
ないし、類推適用によって、手形上の責任を負う事が普通ですので、
今回のこのような例は、A株式会社は責任を負うと解すべきなのです。

 

が、しかし、前のブログで申し上げたように、所持人が”善意無重過失の第三者であれば”という事が
前提であって、B子さんから直接貰った人の場合は、何かと面倒な事になりかねないと
思われます。
手形用紙や署名のスタンプ・捺印が本物であっても、このように無権限者が代理方式ではなく、
「本人の為にする意思のない手形」は『偽造手形』ですので、いくら優良会社の手形といえども
絶対に受け取るべきではないでしょう。
因みに、このB子さん個人へは”請求できる”と言う判例にはなっています。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

ページトップに戻る