手形の裏書の効力は、基本的に…
・手形上の全ての権利が、裏書人に移転する「権利移転的効力」
・被裏書人および、その後の譲受人に対し、手形の支払いを担保とする義務「担保的効力」
・被裏書人として、手形上に記載された者は、その裏書により権利を取得したものと推定される「資格授与的効力」
の3つが有ります。
今回は、裏書の”被裏書人欄の記載のみが抹消された場合”において、その抹消は、裏書の連続として
どうなるのかに付いて、お話したいと思います。
例えば、受け取った手形を裏書して、次に渡す者(譲渡先)の名前を被裏書人の欄に書く訳ですが、
何らかの理由で間違えたとか、渡す者(譲渡先)を変更した場合、
普通は、一度書いた被裏書人にニ本線を引いて、更に抹消印を押す必要がありますよね。
今回のケースは・・・
・抹消印が無い被裏書人欄を抹消しただけ(ニ重線を引いただけ)の手形
・二重線を引き抹消印を押して抹消したとしても、訂正した譲渡先を書いてない場合の手形
を、受け取った場合のお話です。
学説的には「被裏書人の指定は、重要な問題であるから、被裏書人の記載の抹消は
裏書全部の抹消とみなす。」と従来はなっていたようですが、最高裁の昭和61年7月の判例以降、
「外形から見て、被裏書人の記載のみが無いものと見るのが自然で、抹消者の裏書署名を残そうとする
趣旨は、合理的意思とみなされるので白地式裏書とみる。」と、考えられています。
将来もし、被裏書人欄を抹消したまま、何もしていない手形をお受け取りになられた場合は、
上記の通り、連続性に付いては大丈夫のようですが、反対の学説も有る訳ですから、
やはりトラブルの元にならないよう、
・二重線を引き、抹消印を押してもらい、最後に空いたスペースに訂正した譲渡先を正確に書き直してもらう
・ 思い切って裏書欄全部を抹消して、次の所に書き直してもらう
のどちらかでしてもらう方が、良かろうかと私は思います。
今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。