『手形は、手形の振出人(引受人)=行為者の主観的な意思がどうであったか
考慮することなく、手形の記載文言のみによって判断しなければならない』と
手形の勉強では必ず習います。
私が昔習った時は、手形は3つの大きな原則があり、それは 無因性(発生原因を問わない)、
流通性、そしてこの形式性(文言性)であるとして、教え込まれました。
形式性の事を、要式証券性と言い、
手形が効力を生じる為に絶対必要な記載のことを手形要件と言います。
手形に手形要件以外の記載をして、その追加した文言が効力の有る”有益的記載事項”と、
全く手形としての効力が無くなってしまう”有害的記載事項”とがあり、
その辺については、次回のブログでの話題とします。
今回は、前置きが長くなってしまいましたが、
そんな事より、”ちょっとした誤字や脱字”、そして”印字が潰れて読めるけれど厳格には問題有り”
と言う、手形についてお話をさせていただきます。
現実問題として、弊社で取り扱っている手形にも、手書きでなされた箇所(よくあるのが名宛人欄)が、
達筆?過ぎて微妙に誤字になっていたり、振出人欄のスタンプの端が欠けていて読みづらかったり、
スタンプを長年使い続けている為か、画数の多い漢字の細かい文字の所が潰れていたりと、
我々も「これはどうだろう?」と悩む手形が少なくありません。
手形は、ご存知の通り、安全迅速に手形取引が行われるように「手形外観解釈の原則」と言う、
手形上の記載文言や外観に従って形式的に判断しなければならないものとされています。
ただし、手形要件の記載を形式だけから厳格に解釈してしまうと、先に申し上げた例のような、
些細な事で手形が無効になり、手形の所持人の利益が損なわれる恐れを無くすよう、
手形の記載の内容を、取引社会の通念に照らしながら、経験則に従って合理的に判断して、
可能な限り手形を有効なものと、みていくことは許されています。
これを「手形有効解釈の原則」と言います。
ですので、このような悩ましい手形の場合のポイントは、
まず『10人が10人、誰が見ても(読んでも)その文字として判断(推定)出来る』
と言うところを基準にしてもらいたいと思います。
そして、どうしても心配なら金融機関へ持ち込み、ご相談されて下さい。
勿論、弊社にも遠慮なくお問い合わせください。丁寧にご対応させていただきます。
手形は、厳格な有価証券ですが、厳格過ぎて流通を阻害しないような、
配慮も”ある”と言うお話でした。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。